『陽が昇る時、そばにいて』の少し長いあとがき(その2

どうも。
浮月 いのりです。

前回に続き、冬コミで頒布したにことり小説『陽が昇る時、そばにいて』のpdf版あとがきになります。

今回は、ストーリーの話になります。

◆ストーリーが出来るまでのはなし

 自分自身、話を作るとき関係性よりも場面から作るきらいがあって、今回もご他聞に漏れずそうでして。
 一番最初ににことりで思い浮かんだシーンが夕暮れ、観覧車に乗ったにことことりの場面でした。何がきっかけでそのシーンが思い浮かんだかはあまり覚えていません。
 んで、それからどうやって話を作ろうかと。
 最初にことりの話を考えた時は、ことりが留学から帰国後に小さな洋服店をオープン。そのプレオープン閉店間際に、にこ先輩がこっそりと店内に入ってことりと再会して、色々と話をした後に遊園地に行くことになって、最終的には観覧車の中でにこ先輩がことりの傍にいたいってことりに言う――。
 そんな感じの大きな話の流れがありました。

 その中に、例えば衣装だったり一つ一つの小道具にまつわるエピソードを差し込もうかな、と。
 例えば作中に「これからのSomeday」の衣装の話がありましたが、それが当初考えていた短編のエピソードだったりします。
 大元ではことりの店に入ったにこ先輩が最初に目に入ったのが「これからのSomeday」の衣装で、ふと最初にその衣装を着た時、敵わないなと思ってその短編が始まる――という感じでした。
 ただ他の短編が思い浮かばなかったことや、帰国してすぐに個人店作るってどうなんだよっていうツッコミが自分の中にあって結局流れてしまいました。
 ことりがアパレルメーカーのアルバイトについたりしてるのはその名残です。
 と言うか、本編の後、ことりはにこ先輩の衣装担当のアシスタントから衣装を作るようになりますが、にこ先輩がアイドルを引退した後、二人で小さなオーダーメイドの洋服店を作る、という元来考えていた設定を引き継いでいたりします。
 その人にとっての一番笑顔になれる、背中を押す手助けが出来る服を。というような理念を持った。衣装とかももちろん作ります。
 両者とも服を作りますが、ことりはより衣装に特化して。にこ先輩は作った衣装のモデルをしたり、アイドルの衣装を依頼する子の相談に乗ったりしています。

 結局のところそういう話は流れたのですが、ただそこで思い浮かんだ「陽が落ちるまでそばにいて」というタイトル案は悪くないなぁ、と。
 それで考えていくうちに、書きたいシーンが観覧車から朝の海に変わりました。こいつはどの作品でも本当に海を書きたがるな。
 思えば去年のことまき、りじママは夕暮れで、かなまりは真夜中の海。そして今回のにことりは早朝というのもまた、大きな流れで新しい一日というか、始まりを描けたのかなぁ、と思うのですが、それにしてもすぐ
に海に連れて行きたがるのは良くないなぁ、と今更ながら思ってしまいます。

 そうしてなんやかんや考えて出てきたのが今回の大きなあらすじでした。
 ただ、アウトラインは上手く書けたのですが、第一稿で相当に躓くことになります。
 作中でゆき谷というお店が出てくるのですが、そこでにこ先輩と会った時、二人はどういう会話をするのか。その他にも、ことほのうみが書けなかったりしたのも大きな誤算でした。
 海未は良く書くのでまだ良いのですが、いわゆることほのうみの日常や会話が書けないという問題。
 しかも今回の視点はことりなので、ある程度お洒落とか詳しいわけですし。うんうんと唸るわけです。こちとらずっとユニクロでおなじみの浮月 いのりやぞ、と。
 ほいで穂乃果や海未はどんな服を着てるだろうか、とか。なのでもう齢31のおっさん。相談できる女性の友人もいないので一人インターネッツで検索するわけです。
「レディース コート 2017 冬」とか「レディース 20代 コーデ」とか。
 大人になった矢澤にこ先輩ってピンクのリップ付けるのか? ん? ピンクのリップってあるのか? ってなって「ピンク リップ モデル」とか。冬の朝三時とかに。地獄。
 んでもって出てきても良くわからないわけです。かといってその辺りが自分の中で落ちてくれないと話を何故か書けないわけです。地獄。
 前半はそのあたりの苦戦が如実に出ています。服とかあまり書かれていないですけど、ほんとに辛かったです。
 これマンガだったりとかしたらもっと恐ろしいことになってたんでしょうね。絵描ける人というか、漫画描いてる人ホント凄いと思います……。

 そういった意味では後半は基本的にことりとにこ先輩で進んでいくのでまだ書けたほうかもしれません。それでもしんどかったのはありますが。
 特にしんどかったのがこの話、ことり視点で進むのですが、話を書くに当たってのバックグラウンドを考えた時間はにこ先輩の方が間違いなく多かったのです。
 ことり視点なのでそこまでにこ先輩のこと深く掘らなくてもいいかな、と思ったのですがとんだ見込み違いで、むしろ考えないと全く話が進まないと言うか、自分で納得が出来ないという沼。
 本編ではにこ先輩は喉に異常は無かったというシナリオでしたが、最初考えていたのは記事通り再発となってアイドル引退が確実。そこから先述した「一緒の店をやろう」という話に繋がるのを考えたのですが、に
こ先輩ストーリーで考えるとどうも自分の中で納得がいかなくて。喉を再び壊す理由とか。にこ先輩そこまで頭悪いか? とか。
 喉を壊すという話をことりと一緒にお店を開く理由にしたくなかった、というのも自分の中ではあったんだと思いますが。
 それで海に行くことやらのポイントを入れながらうだうだにこ先輩のストーリーを考えたら、それをことりの話にフィードバックさせてもう一度練り直すということをやったりして、正直、途中でにこ先輩視点で話を
書こうか迷ったくらいでした。
 それはそれで今度はアイドルやにこ先輩側に登場する人物(東雲含め)考えてないといけなくて、流石にそこまで時間は割けないし0から作れないな、と。
 結果としてことり視点で作ることになったのですが、中々自分自身で落としどころが見つからなくて本当に苦労しました。
 だからこそ一番書きたいシーンである海のシーンを書けた時は妙にテンションが上がったのかもしれません。

 海のシーン。以前書いたことまき小説『いつか、そこで君と』とかを思い出してしまいます。
 『いつか、そこで君と』は鎌倉の海に行って実際に風景を見たのですが、今回はネットでそれっぽい場所を探したり、動画で陽が昇る海の動画を見たりしました。ジジイなんでそもそも朝早く起きれません。。。
 なので朝の雰囲気はそういった資料と以前pixivに書いた短編「Goodnight orange light」の時に実際に体験した東扇島の夜明けを参考にしました。
 『いつか、そこで君と』は「夕暮れ」の海でしたが、今回は「夜明け」の海。始まりを意識しました。
 後、個人的に書きたくて仕方が無かった浜辺で追いかけっこをするシチュエーションを書けたのが本当に良かったです。あの辺りがとても書いていて好きでした。

 そうして云々うなりながら何とか出来たのですが、見返してみたら何だかんだで話としては気に入っていたりします。

(その3につづきます)

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